獨行道(どっこうどう)
一、世々の道をそむく事なし。
(不违背人世常理。)
一、身にたのしみをたくまず。
(人生不求享乐。)
一、よろすに依怙の心なし。
(万事不依赖他人。)
一、身をあさく思世をふかく思ふ。
(轻自我重世人。)
一、一生の間、よくしん思はず。
(平生不思欲心。)
一、我事におゐて後悔をせず。
(自身之事皆无悔。)
一、善悪に他をねたむ心なし。
(绝不嫉妒他人。)
一、いつれの道にもわかれをかなしまず 。
(分道扬镳之时亦不伤悲。)
一、自他共にうらみをかこつ心なし 。
(己事也好、他事也好,皆不抱怨。)
一、れんぼの道思ひよるこヽろなし 。
(不沉迷于恋慕之情。)
一、物毎にすきこのむ事なし 。
(诸事无偏好。)
一、私宅におゐてのぞむ心なし 。
(自宅不求豪华奢侈。)
一、身ひとつに美食をこのまず 。
(粗茶淡饭不贪恋美食。)
一、末々代物なる古き道具所持せず 。
(不占有本应世代相传的古物。)
一、わが身にいたり物いみする事なし 。
(不做有害自身的事。)
一、兵具は各別よの道具たしなまず 。
(兵器不求无谓的极品。)
一、道におゐては、死をいとはず思う。
(为了道不惜一死。)
一、老身に財宝所領もちゆるなし 。
(老来不贪财。)
一、佛神は貴し、佛神をたのまず 。
(敬佛神而不求之。)
一、身を捨ても名利はすてず 。
(身可死,武士之名不可弃。)
一、常に兵法の道をはなれず。
(不离武道。)
正保弐年(1645年) 五月十二日 新免武藏玄信